環境隊員技術補完研修 国際環境衛生講座

☆先月の研修から3週間後、第二回目の補完研修が実施された。

技術補完研修「国際環境衛生講座」
期間:2008年12月19日~23日
場所:JICA広尾センター(東京都)
主な研修内容:途上国の開発と衛生の関係を、特に廃棄物と水質に焦点を当てて学ぶ
Green issue …自然系の環境。前回のキープ協会の研修。
Brown issue…ゴミや排水等の都市系の環境。今回の研修。

研修の講師は長年途上国の衛生問題にかかわってこられた2人の先生(S先生とK先生)で、これから途上国に派遣される若者に、自らの経験と知識と伝えたいとの思いから、JICAに押し掛けて、この講座ができたとのことである。
講座は今回で39回を数え、内容は、そのつど改良されていっている。この分野の話は一年間じっくりと講義をおこなってもよいぐらいの分量があるが、それを5日間で集中して学ぶという、密度の濃いものとなっているそうである。
研修は6限まであって、1限が9:30開始、6限は17:50終了予定である。 受講者は9名でこのうち8名とは前回の研修で顔見知りである。
以下に講義の概要を記録する。

【一日目】
○1限目:なし
○2限目:開講式・研修内容説明
○3限目:開発と環境について
この日のこれ以降の講師はS先生である。
・後開発発展途上国では5歳以下で4割が死亡する
・先進国と途上国の死因の違い→途上国は感染症と出産関連で半数が死亡する(先進国はそれぞれ1パーセント程度)
・富の増加と人の生活の豊かさは、関係があっても、比例するとは限らない。国民の教育や保険費より、軍事費の方が上回る最貧国がいくつかある。教育特に女性の識字率の向上がカギである。
・フィジーの非識字率7.1パーセント、2003年の1000人あたりの、5歳未満死亡率20人(日本4人)、平均寿命67.8歳
・持続可能な開発:将来の世代のニーズを危うくすることなしに現在のニーズを満たすこと。
今日のいのち(開発)か、明日のいのち(地球環境問題)か?→両方の解を実現させなければならない
・途上国の三同時(環境衛生、都市公害・産業公害、地球環境問題)、三無状態(人、技術、資金)
・途上国環境問題の背景
1.急速な都市化
2.歴史的背景(植民地主義の負の遺産) EXマレイシアのゴム園
3.日本のアジア侵略 EX重慶の酸性雨汚染
政治的背景(冷戦の終結) EXラオスに対するソ連支援の撤退
4.経済的背景(貿易と環境 EXソロモンの木材伐採、トンガの南瓜)
人口圧力(貧困・人口増加・環境破壊の悪循環) EXインドネシアの焼畑
5.激しい貧富の差、気候的・地理条件
・途上国の開発と環境は私たちの生活と直結している
木材、バナナ、エビ
・フェアトレード
環境にやさしいネパールの絨毯の例:染料に重金属を使わず、原毛の自然の色を生かす。子供を労働力として使わない。川を汚さない。→ドイツの消費者の要求を利用

○4限目:途上国の社会構造と環境問題
・S先生の非常に豊かな経験談を聞かせていただいた。フィジー、ペルー、マレーシア等
これらの国々では、多民族、多様な言語・宗教が当たり前。異文化の対立を常態とする国際社会での生活技術が、我々日本人には決定的に欠けている。
・異文化と技術移転
安全な飲み水についての考え方の相違:先進国はおいしさ、途上国では健康の段階
環境サンプルの採取・分析:都合の悪いデータを消したりする。採取する人、分析する人、フラスコとかを洗浄する人が別々
環境データを私物化する人もいる
White elephant(白い象):先進国の援助で建てられた施設で、現地の状況にそぐわないため、使用されていないもの。なお、白い象の語源は、その昔ミャンマーの王様が優秀で気に食わない部下に褒美として、珍しい白い象を与えたことによる。王様からもらった貴重な象なので、労働させるわけにもいかず、役に立たなくて迷惑だったことによる。
・技術移転の心得
4A:あせらず、あてにせず、あきらめず、あなどらず

○5限目:途上国の都市化と環境問題
・急速な都市化がもたらすもの
激しい貧富の差 EXスラム、スクワッター
インフォーマルセクターの拡大 EXスキャベンジャー
ペルー、バングラデシュ、グアテマラ等の事例、先生の経験談
・大気汚染に関しては、室内の大気汚染による健康被害が大きい(途上国では室内でバイオマスや石炭を燃やすから)

○6限目:協力隊OV(帰国隊員)との情報交換
今年の六月までバングラデシュに派遣されていたHさんに来ていただいて、活動の発表をしていただいた。Hさんは廃棄物関連の業務で活躍されたので、同様の任務に就く自分や他の参加者にとって貴重なお話だった。Hさんは当初の予想よりも多くのことができたとおっしゃられていて、協力隊員として成功した例であると思われ、勇気づけられた。

☆一日目の総括
大きくまとめれば、日本と途上国の常識は全く違うから、赴任国の文化をよく学び、尊重してことを進めよ、という話だったと思う。話の半分は先生の体験談で、途上国の実情をリアルに感じることができた。また、実体験だけに興味深い話ばかりであった。先生の引き出しの多さには驚嘆した。
また、このあと、懇親会として、居酒屋で飲み会があった。そこにはフィジーの元協力隊隊の方も二人参加していただいて、現地の状況等を教授していただいた。さらに二次会もあってこの日は飲みすぎ、少し体調を悪くした。これまでの反省がない。

【二日目】
○1限目:途上国の生活環境と健康
○2限目:途上国の水系感染症基礎知識
○3限目:途上国の水供給・衛生設備基礎知識
○4限目:開発途上国における適正技術1
1限から4限まではK先生が担当。それぞれ時間ごと、テーマは分かれているが、それぞれ関係するテーマなので、講義の内容は連続であった印象である。K先生も本当に経験豊かな先生で、まさに経験談の連続であった。それが、3分とか5分とかの周期で次々に展開していったので、すべてを記録することは難しい。
・環境と衛生(健康)には矛盾がある:昔日本では水辺では日本住血吸虫の宿主のマキガイがいたが、農薬の汚染でいなくなった。→何が良くて何が悪いのか?
・現在の便益と将来の便益では未来の方が小さく見えてしまう。それを大きく見せるのが環境教育。
・衛生環境の悪化がもたらす、病気について:人間の体内から皮膚を突き破る寄生虫とか、大量の回虫とか、フィラリアの患者とか恐ろしい写真を表示。しかしそういった病気は汚れた水源を利用することによって生じるので、井戸を掘ったりすることによって防げる。
・70℃なら短時間で菌や虫は死滅する。60℃なら3日かかる。
・学校にトイレができれば、人口増加率が低減する(仮説):学校にトイレがないと小学校高学年ぐらいから女の子は恥ずかしがって学校にこなくなる。家にいると早く結婚して、早くに子供を産む。人口が増える。
・最適技術とは?
地域の状況によって適合する技術は異なる。日本だと土地が制約要因となっているので何でもコンパクトにしようとする。
文化的な制約についても考慮する必要がある。タブーの森で井戸を掘っても利用者がいない→現地の人を巻き込んでことを進めれば防げた。
バングラディシュでは砂利がないのでレンガを砕いて砂利にする。それを仕事にしているは女性・子供とかも多い。ここで、砕石機を導入して、効率化を図ることは雇用を考えると、最適技術といえるだろうか?
いかなるプロジェクトでも損をする人がいる。井戸を掘れば、水売りが困る→事前に調査すべき

○5・6限目:問題解決法(PCM・KJ法)
S先生から問題解決法(PCM・KJ法)を概要説明を受けた後、ケーススタディーを実施した。9人の受講者を2グループに分けて実施。私はA班で5人グループであった。テーマは3択であったが自分たちは
「明日は彼女の誕生日でプレゼントをあげたいが、現在5000円しかない。給料日は5日後である。どうするか。」をテーマとした。
机に大きな紙を広げて、みんなでPost itに意見を書き込んで、考えをまとめていった。当初の自分の発想とは異なる展開になって興味深かった。

☆二日目の総括
1限から4限は情報の洪水。5限6限のケーススタディーは楽しかった。

【三日目】
○1限目:開発途上国におけるごみ処理技術
1限から4限まではS先生が担当。
・全体的に廃棄物関連の最適技術の話、事例の紹介。
・途上国清掃事業のメイン・スローガン:Do More with less(少ない機材・人材でより多くのごみを集め、増大するごみサービス需要を限られた資源で満たすこと)
・ごみ収集車は予備の車が絶対に必要
・トラックスケール(ごみ収集車の重さをはかる機械)で収集車の管理をすることはよい方法
・清掃人は女性の方が真面目に働いてくれる
・住民参加で支払い能力(affordability)の中に収まる解決策を探す
・衛生教育で住民の支払い意思(willingness-to-pay)を高める
・準好気性埋立(福岡方式)の素晴らしさ:有機物の分解が早い、自然換気、浸出液のBODが低い、メタンガスの発生量がすくない。しかし、平らな土地では作れない(マーシャルとか)
・ソロモンでのコンポストの事例:コンポストで野菜をつくってスープを作る→成功

○2限目:スラムスクワッター地域の環境衛生改善
1限目の時間がoverしていたので、早足の解説だった。
・スラムとスクワッターの違い:スラムは既存の都市の劣化・維持管理不可能、スクワッターは不法占拠者
・ラテンの男は見栄っ張りで、他に金をつかって衛生問題とかに金をだしたがらない。
・女性の意見を聞くには女性の専門家が必要
・自治体の最高責任者の説得は重要
・状況が似通っている途上国間の水平技術協力が有効。トンガとフィジーとか。
・スクワッターの生きる知恵はすごい。ペルーでの10万人で一斉に移動の例。

○3限目:環境教育
・なぜ環境教育か?:自国の文化を理解し、誇りを保つため(環境保護、アイデンティティーの確立に不可欠)
持続可能な開発を長期的に支えるのは市民の意識
・途上国の環境問題の持つ問題性:身近な、今日どう生きていくかという深刻な問題からの遊離、階級社会のカモフラージュ(自然保護に関心を示すのは上流階級・階級差が問題の根源であるのに上流階級の善意で中和される)、先進国の価値観の押しつけ
・環境教育教材は現地の事情をよく反映したものを→カウンターパートと共同で
・ターゲットは第一に子供、次に女性

○4限目:エコツーリズム
コスタリカのエコツーリズムに学ぶ
コスタリカは軍隊のない永世中立国で、国家予算の教育、衛生分野がそれぞれ約3割を占める。昔ヨーロッパ人が来訪した際、天然痘で現地人が死滅したため、人種構造が単純で、政情は周辺国家と比較して安定している。極めて豊かな生態系が存在している。外貨獲得はバナナを抜いて、観光が第1位。その推進役がエコツーリズム。
・エコツーリズムはガイドの質にかかっている。モンテベル自然保護区のガイドになるには試験があり、なってからも最新知識を得るための研修がある。
・現地に行ったS先生一行では、また来たいとの声が多かった。リピータの獲得。

○5・6限目:グループワーク
昨日説明を受けた問題解決法を用いて、グループの中の一人の要請概要を例として、議論を進める。先生はいないので、受講者のみで実施した。
しかしながら、PCM法とか、ほとんどの人がよく理解していなかったため、はじめはどうしてよいか分からず混乱した。しかし、細かいことは考えないで、Post itに意見をかいて壁にはったりして、みんなで課題に対して話し合った。明日も同様の時間があるのできりのいいところで切り上げた。
なお、選んだ要請概要は、ボリビアの廃棄物関係の環境教育で、概ねグループメンバーの最大公約数的な内容である。

☆三日目の総括
先生の体験談が面白かった。

【四日目】
この日以降最後まで講師K先生
○1限目:開発途上国における適正技術2
・昭和30年頃の日本の廃棄物処理、水道、廃水処理の状況をビデオで見た。当時の日本の状況は現在の発展途上国の状況とにているところもあるので参考になるかもしれない。
・し尿を海洋投棄すると、魚がたくさん取れたりするが、衛生上問題があり、近年は実施されていない。し尿中の浣腸とかが、近隣の海水浴場にながれついたりする。

○2限目:開発途上国における水供給技術
・水くみポンプには様々な種類がある
・採水(雨水・地下水)の方法もいろいろある
・バンダリズム(せっかく作った施設を破壊すること)に気をつける必要がある
・盗難対策が大変
・単気筒ディーゼルエンジンは悪い燃料でも動くので便利

○3限目:開発途上国におけるし尿・生活排水処理技術
・途上国では地下水は汚れていて当然
・水道があっても油断できない
・インセンティブがないと失敗する

○4・5・6限目:グループワーク
昨日の続き。PCM法をみんなよくわかってないので、苦労したが、アクションプランをなんとかまとめることができた。

☆4日目の総括
前半は技術の紹介。後半はグループワークを受講者だけで実施。
終了後みんなで(参加者5人)飲みにいった。場所は1日目と同じ「わたみ」で、しかも同じ席だった。その後みんなでカラオケに行って盛り上がった。久々に大人数で歌った。また、デュエットできてよかった。

【五日目】
○1限目:環境教育・衛生教育のツール
ハエとかゴキブリの生態を伝えるための教材等の紹介。それ以外にもいろいろ。

○2限目:住民参加型プロジェクト
・外国人特権(珍しいこともあってか、外人のいうことなら聞いてくれる)の活用
・インフォーマルリーダーの利用(お坊さんとか)

○3限目:情報収集・問い合わせの仕方について
・情報はgive and take
・メーリングリストやニュースレターの活用

○4限目:グループワーク・アクションプラン発表
・昨日、一昨日で作成したアクションプランの発表。はじめはB班から、我々は聞き役。B班はベトナムの要請内容で、アクションプランは非常によくまとまっていた。次にわれらがA班であったが、なるようになる、という感じで発表した。

○5限目:質疑応答・閉講式
・最後に講義の意見を各自述べた。私は、グループワークの途中で、ほったらかしではなく先生に途中経過等を見てもらいたかった、と意見した。おおむねA班のメンバーはそう感じていたようだった。その他受講者の意見としては、量が多すぎる、双方向型の講義にしてほしい等があり、私もそうおもった。しかし、先生としては非常に限られた時間で、なるべく多くのことを伝えたい、と切に考えられている結果なので、まあ、これはしょうがないことかなと思う。消化しきれなかった部分は各自努力でなんとかしなければならないだろう。

最後にみんなで記念写真を撮って、これでお別れの豆田さん(訓練場が二本松)と握手してその場を去った。

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