技術補完研修 インタープリテーションを学ぼう

協力隊に合格すると、派遣前の2か月ちょっとの間、研修をうけることになるが、それ以前に技術レベルが満足ではない人には、自己学習や技術補完研修といった課題が出される。環境教育の合格者では専門家が少ないので、ほとんどの人に課題が出されるようだ。もちろん、私にもだ。私の場合技術補完研修は2回あり、その内の一つが先日実施されたので、それについて以下に記録する。

技術補完研修「インタープリテーションを学ぼう」
期間:2008年11月26日~29日
場所:山梨県北杜市高根町清里
研修先:財団法人キープ協会(キープ自然学校)
研修内容:参加型自然体験環境教育指導について インタープリテーション(自然解説)手法を学ぶ

私は赴任先では都市部でゴミ問題をやるので、自然系の環境教育は直接関係ないように思ったが、事前に送付されてきた案内をみると面白そうなのでこの研修は楽しみにしていた。また、協力隊のことは別にしても、環境教育について学べる良い機会であるし、費用も食費以外は協力隊で負担してくれるので非常にありがたいことだと思った。

keepkyoukai
清里の朝・キープ自然学校

☆一日目
横浜から3時間かけて清里までやってきた。清里は標高1400mの冷涼な地域で避暑地として有名であるが、11月下旬はもう冬といっていい季節だった。前日に降った雪が路肩に残っていた。駅ではYさんという、今回の研修の講師の先生が迎えにきてくれて、車でキープ自然学校に送ってもらった。受付では首にかけるタイプの名札を渡され、そこに氏名と派遣先とニックネームを書くように求められた。とりあえず、ニックネームは「マット」にした。以後、本研修ではこのニックネームで呼ばれることとなった。これはYさんのような先生も同様であった。はじめはちょっととまどった。なお、参加者は20代前半から30代前半の男女10名であった。一日目の内容の概略を示す。

○アイスブレイクの手法と有効性
今回の参加者10名と講師の先生3人は初対面であったが、その間にある緊張を除くために、全員でゲーム等をした。まずは隣の人とストレッチをして体をほぐす。そして、人間マップゲーム(部屋が世界地図だとして、中心を日本とし、各自の派遣国の該当すると思われる場所に移動する。また同様に、部屋を日本地図として研修実施場所である清里を中心とした場合、各自のその日来た場所に移動した。)をして、互いのことを知りあった。
次に、みんなで輪になって、地球儀のような紙風船を対面にいるメンバーのニックネームを呼んで、パスする。これにより互いの名前と顔を覚えることができた。また、少し体を動かすことで緊張もほぐれた。これにより、以後のプログラムが円滑に進んだとおもわれる。

○インタープレターによるプログラム体験
講師のAさんにつれられて、森の観察をした。ただ単に森を歩いて見物するだけではない。
・ミラーハイク
小さい鏡を眼の下にあてて、木の上の方の象を見ると、普通に見上げてみるより対象が大きく見えて観察しやすい。
・目隠しトレイン
列になって前の人の肩をもって、目をつぶってゆっくり歩く。それにより、普段あまり意識しない足の裏の感覚で森を体感した。
・私は誰でしょう葉っぱ版
一枚落ち葉を拾い、それを他の人の後ろの襟に付ける。各自は自分の後ろにくっついた落ち葉の種類がわからないが、他の人に質問(私の葉っぱは赤いですか、とかのハイかイイエで応えられる質問)をして、何回かそれを繰り返し、見当がついたところで、その種類の葉っぱを見つけて拾ってくる。
・わらしべ長者
森で3つのものを拾ってくる。まず、森の中で何かをひとつ拾う。次はそれから形や色、なんでも良いので連想されるものを拾う。次も同様にして計3つのものを集める。
・なんでも俳句
森で体験したことを俳句あるいは短い言葉で表現して皆の前で発表する。

普通に森を観察するよりも深い体験ができた。最後の俳句は体験の染み込ませだろうか。今回体験した他にも、たくさんの手法があり、それをマスターして状況に応じて使いこなせる人がプロのインタープリターであると思った。
また、これは後で聞いた話だが、こういう森遊びは小学校の高学年ぐらいが一番喜んでくれるらしい。一方で、大人に対しても好評らしい。大人の場合は興味のある人しかこないし、あえて楽しむという作法もある。問題なのは中学生ぐらいの参加者で、場合によっては何を話しても「壁打ち」のようになってしまうんだそうな。難しい年ごろだ。

○3キーワード自己紹介
まだちゃんとした自己紹介をしていなかったので、3キーワード自己紹介を行った。紙に自分を象徴するキーワードを3つ書いて、その説明2を分程度でをしながら自己紹介した。

○環境教育概論
・場を作ることの重要性
・伝えるということ
言ったことは忘れられる。見たことは思い出す。体験したことは理解する。発見したことは身に付く。
・環境問題解決の3つの方法
規制による方法、技術革新による方法、意識改革による方法
規制を守るため、技術革新を生むための意識改革を促すのが環境教育。

・一日目の研修内容は以上である。その他生活面に関してだが、食事は地元の食材にこだわったというおいしいごはんだった。特に、牛乳が名物みたいなので、それを原料とするような料理が多かったか。その他、野菜が豊富で大変ヘルシーだった。食べたら、自然学校だし、そのあとは健康的に寝るのかといったらそうではなくて、研修室の机の下にはなぜか酒瓶があって…。ということで夜は酒盛りだった。他の参加者といろいろ話せてよかった。内容まではここに書かないが、参加者は全員大人で、それなりに自分の生き方というのがはっきりしている人たちであり、私と方向性が同じではなくとも、協力隊に参加しようという人たちなので、自分の殻に閉じこもるようなタイプではなく、話せば熱かった。だからつい深酒してしまった。これが良くなかった。
ふと目が覚めると、研修室は真っ暗で、自分しかいなかった。その後自分でもよくわからないことをして、ベッドにはいって寝た。

☆2日目
昨日の酒のせいでみな体調が悪そうだ。しかし、自分は意外に元気であった。よし、今日もはりきっていくぜ、と思ったが、午後から急激に体調が悪くなり、飯もほとんど食べれなくなって、この日はやることやったあとはすぐに寝た。時間差二日酔いか。不甲斐ない。
体長は悪かったが、研修は興味深いものだった。

○コミュニケーション&インタープレテーション概論
皆自分の枠組みで物を見ている・考えている。コミュニケーションとはその枠組を超えていくこと。お互いを知る、共通の体験をするなどのチューニングが必要。
パワーポイントのプレゼンはよくない。なぜなら、自分の言いたいことを言っているだけで、聞いている人のことを考えてないから。聞いているひとの反応をみて、話は進めていくべき。
・2分間スピーチ
「自分の好きなもの・こと」で2分間でスピーチする。準備は5分間。聞いている人に感想を紙に書いてもらう。2分では話をまとめきれない。緊張して、早口になり発音がはっきりしないとの指摘。声の強弱が大切、大事なことは2度言う。場数を踏んで体験を積み重ねるしかない。

○インタープリター体験
実際にインタープリターを準備段階から実施した。テーマは決まっていて、細部は自分たちで決める。4つのグループに分かれ、司会のグループ以外のメンバーは司会者の指示に従う。自分は3人グループであった。制限時間15分。
・森の素材で自己紹介
木や葉っぱ等の森にあるものを使って自己紹介をしてもらう。たとえば棒を持って「自分はボーっとした人間です」、とか。グループ内でどうするかを検討して、何度も練習した。本番では、緊張して舌がもつれたところもあったが、練習よりうまくいった。また、ルール説明を寸劇風にしたのは好評であった。
その他のグループが実施した内容
・葉っぱジャンケン
まずは色々な種類の葉っぱを5枚あつめてもらう。2人ペアになって、そしてそれを隠した状態で、司会者がお題を出す。たとえば、大きい葉っぱ、とか。参加者は自分の集めた5枚の葉っぱのなかで一番それに適した葉っぱ、先ほどのたとえでいう、大きい葉っぱをそれぞれだして、大きい方を出した方が、勝ち。負けた方は自分の出した葉っぱを相手に渡す。引き分けの場合、互いの葉っぱを交換する。これをペアを変えながら繰り返し、最後に最も葉っぱを多く集めた人が勝ち。
・森の宝もの…同じのも探し
司会者が事前に用意した森の素材9点を1分間見て、それとそっくりなものを5分間で見つけてくる。3人組で実施。
・森のあいうえお
室内で実施。一人一人に一文字のひらがなが書かれた紙が配られ、それを頭文字にして、森での体験を短い言葉で表現する。体験の染み込ませ。

○補講 インタープレテーションとは
自然と人間の橋渡し(翻訳者)。葉っぱや鹿のフン、木のような見えるものから、食物連鎖や多様性、価値観、文化等の見えないものを伝える。

○室内での環境教育プログラム体験
生き物トランプ等各種教材の紹介

☆3日目
正直この日も体調が悪かった。二日酔いに加え、野外に長時間いたため体が冷えて、風邪をひいたのか。なんと軟弱なことか。しかし、研修では集中して臨んだ。

○施設見学
やまねミュージアム、八ヶ岳自然ふれあいセンターの見学
見て聞いて触れられる工夫が髄所に見られた。

○環境教育企画の立て方
・はらわらゲーム
カードに単語が書いてあって、それを一枚ひいてその単語から連想される言葉をさまざまな発想で5つあげる。たとえば、「国名」なら日本、中国、韓国…ではなく、日本、地球儀、国連、万国旗…とか。これにより発想が自由になる。企画を立てるのにこういう様々な視点で発想することは重要である。

・企画作りの実習
テーマ「環境意識を高める」
企画内容は自由
時間は4時間程度
途中で中間相談会を実施
終了後は全員の企画を見て、批評を行う。
自分の企画は「大人のための環境教育」
コンセプトは「大人だからこそ分かる、大人のための環境教育」

マーケティング:子供の豊かな感性を育てることが、将来の自然を守ることにつながっていく。これが環境教育の正道である。また、大人に対してもそのやり方は有効であるものの、個人差が大きく、自然物の何に対しても大した感慨を抱かないひともいると考えられる。また、大人には感性の有無とは別に、論理性や数字の理解といった大人なりの物の見方がある。そして環境問題解決を進めようとするなら、子供に対してより、現在社会の中心にいる大人に対して訴えることが直接的で近道であると考えられる。このことから環境教育の在り方として、大人に対するアプローチについても考えていくべきである。また、「大人の」という言葉からは「高級感」や「優越感」が連想され、注目を集めるのではないかと考えた。

企画概要:理性で把握する環境教育の実施。例えば、やまねとやまねが住む森を守ろうとするなら、感性に訴えかけず、やまねや森の経済的効果を計算して掲示する。もしくはやまねの希少性をレットブックに載っている等の社会的な枠組みで示して、その保護を訴える等。もしくは森の生物の多様度指数を求めてみるとか、生き物の命ですらデータでしめす。あとはパソコンおいて、シミュレーションできるようにしたり…。地味で難しい論文を紹介したり。

展示の仕方:環境に関する展示館の片隅に18禁コーナー(子供の夢を壊してはいけないから)を設けて、そこに中が見えないスペースを設けてその中で展示する。中は渋い居酒屋風。まさに大人向け。環境に関する展示館は概ね万人向けあるいは子供向けにセッティングされているが、あえて、対象を限定することもよいのではないかと思った。

これに対する批評だが、おおむね好評であった。人の逆をいく、ひねくれた発想だったが、環境コンサルタントとしては当然?の発想である。また、他のメンバーもそれぞれの個性を生かしたユニークな企画を立てていた。
全体的な感想として途中で誰かに相談したり、最後にフィードバックすることは大切であると感じた。

・丸一日の間、節制したおかげて、体力も回復し、この日の晩は大いに飲んだ。途中酒が足りなくなって、自販機を何往復もした。

☆4日目
朝起きると、二日酔いではなく、普通によっぱっらていた。寝たのが朝5時ごろなので、アルコールの分解が間に合わなかった。
しかし、研修はいよいよ最終日を迎える。

○研修全体の振り返りと分かち合い
・派遣先で最も大切だと思うことを紙に書いて、それぞれ説明していく。自分は「信用」とした。他のメンバーは「笑顔」とか「遊び心」とか書いていたがすべて必要なことだと思った。
・この研修の締めとして、最後の一言を紙に書いて、発表した。自分は「終わりは始まり」とした。研修でいろいろ学んだが、これはきっかけであって、これからが勉強なんだという思いを込めて。

この3泊4日は、期待以上の研修であった。多くを学んだというより、多くを気づかせてもらった。しかも、楽しかった。環境教育に限らず、こういう教育の仕方を今後も広げていくべきだと思った。
この研修では受講者に積極的な発言が求められ、そうさせる場と雰囲気づくりが作り出されていた。
学校等の授業でも、先生が生徒に意見を聞くことは多いが、今回の研修は少人数で、椅子にずっと座って講義を受けるより、輪になって先生や他の参加者の話を聞く時間が多かった。そういう場と雰囲気を巧みに作るのが講師の先生の技なのだろうが、そのあたりも見習いたい。

研修は14時で終了。自然学校を去る時、角を曲がるまでYさんとAさんが玄関でずっと手をふってくれていた。

●過去を振り返って
環境教育でも、俺は廃棄物関連だったので、この研修は直接役に立ったわけではないが、良い経験をさせてもらった。
また、他の環境教育隊員とも知りあえて有意義だった。
なお、キープ協会の環境教育プログラムは面白かったので、帰国してからまた参加した。
ここは飯がすごく美味い。

←青年海外協力隊奮闘記目次に戻る

コメントを残す

サブコンテンツ

このページの先頭へ